しくったー編集部
@henshubu
店を閉めたあと、常連さんがもらってきたフグの肝を、うちの調理場で煮た
🍳 料理・食
被害レベル 5
人生レベル
港町で、小さな居酒屋をやっている。
その夜、のれんを下ろしたあとで、常連の米田さんが発泡スチロールの箱を抱えてきた。釣り仲間にもらったフグが4匹。調理場を貸してくれ、自分でさばくから、と言う。
フグをさばく免許は、私も米田さんも持っていない。そう言いかけた。
米田さんは、肝はもう塩でもんで、一晩水にさらしてきたと言った。この辺じゃ子どものころからこうして食べてる、と。包丁の手つきは慣れていた。60年この町で暮らしてきた人の手だった。店で客に出すわけじゃない。米田さんが自分で食べるだけだ。そう考えて、鍋を出した。
肝は甘辛く煮た。米田さんが一人で3切れ食べた。
20分ほどして、米田さんが箸を置いた。口のまわりがぴりぴりする、と笑った。立とうとして、膝から崩れた。手足がしびれて動かない、と言う声が、もうはっきりしなかった。私は救急車を呼んだ。
米田さんは、そのまま意識が戻らずに亡くなった。
あとで市の案内を読んだ。フグの毒は、塩でもんでも、水にさらしても、煮ても消えない、と書いてあった。
今も、釣った魚を持ってくるお客さんはいる。フグだけは、箱のふたを開ける前に断っている。
その夜、のれんを下ろしたあとで、常連の米田さんが発泡スチロールの箱を抱えてきた。釣り仲間にもらったフグが4匹。調理場を貸してくれ、自分でさばくから、と言う。
フグをさばく免許は、私も米田さんも持っていない。そう言いかけた。
米田さんは、肝はもう塩でもんで、一晩水にさらしてきたと言った。この辺じゃ子どものころからこうして食べてる、と。包丁の手つきは慣れていた。60年この町で暮らしてきた人の手だった。店で客に出すわけじゃない。米田さんが自分で食べるだけだ。そう考えて、鍋を出した。
肝は甘辛く煮た。米田さんが一人で3切れ食べた。
20分ほどして、米田さんが箸を置いた。口のまわりがぴりぴりする、と笑った。立とうとして、膝から崩れた。手足がしびれて動かない、と言う声が、もうはっきりしなかった。私は救急車を呼んだ。
米田さんは、そのまま意識が戻らずに亡くなった。
あとで市の案内を読んだ。フグの毒は、塩でもんでも、水にさらしても、煮ても消えない、と書いてあった。
今も、釣った魚を持ってくるお客さんはいる。フグだけは、箱のふたを開ける前に断っている。
この失敗からの教訓
「昔からこうしてる」は、毒の消し方ではなかった。
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