しくったー編集部
@henshubu
裏の斜面のギョウジャニンニクを、においが弱いまま隣の夫婦に分けた
🍳 料理・食
被害レベル 5
人生レベル
裏の斜面には、毎年4月にギョウジャニンニクが出る。亡くなった父が山から株を取ってきて植えたものだと聞いていた。私は毎年それを摘んで、近所に配ってきた。
その年も、4月の半ばに摘んだ。ひと抱えあった。
摘みながら、一度だけ手が止まった。ギョウジャニンニクは、葉をちぎるとニンニクのにおいが立つ。それが、その年はほとんどしなかった。
3月が寒かったからだろう、と思った。場所も、葉の形も、毎年と同じだ。父が植えたものを、私が間違えるはずがない。束ねて、新聞紙で包んだ。
隣の坂本さん夫婦に、半分を渡した。ご主人は74歳で、私の碁の相手だった。今夜は卵とじにするよ、と笑っていた。
次の日の朝、奥さんから電話があった。夜中から2人とも吐き続けて、救急車を呼んだという。
病院で、残った葉を見た保健所の人が言った。
「これは、イヌサフランですね」
春に、ギョウジャニンニクとよく似た葉を出す植物だという。秋に薄紫の花が咲く、庭に植えられる花だ。葉にも球根にも強い毒がある。ちぎっても、においはしない。
秋になると斜面の端に薄紫の花が咲くのを、私は何年も見ていた。父がどこかから持ってきた園芸の花だろうと思っていた。それが、ギョウジャニンニクの中にまで広がっていた。
奥さんは助かった。ご主人は、助からなかった。
葬儀に行くかどうか、一晩迷って、行った。奥さんは私に頭を下げた。あなたのせいじゃない、とは言わなかった。言われても、私は困ったと思う。
その週のうちに、斜面を全部掘り返した。ギョウジャニンニクもイヌサフランも、区別せずに全部。軽トラの荷台に3杯あった。
今年の春、何も生えていない斜面を見ていたら、別の近所の人に「今年は配らないの?」と聞かれた。もうやめたんです、とだけ答えた。
においを嗅いだ、あの一回。あそこで手を止めていれば、と今も思う。止まっていたのは、ほんの2秒だった。
その年も、4月の半ばに摘んだ。ひと抱えあった。
摘みながら、一度だけ手が止まった。ギョウジャニンニクは、葉をちぎるとニンニクのにおいが立つ。それが、その年はほとんどしなかった。
3月が寒かったからだろう、と思った。場所も、葉の形も、毎年と同じだ。父が植えたものを、私が間違えるはずがない。束ねて、新聞紙で包んだ。
隣の坂本さん夫婦に、半分を渡した。ご主人は74歳で、私の碁の相手だった。今夜は卵とじにするよ、と笑っていた。
次の日の朝、奥さんから電話があった。夜中から2人とも吐き続けて、救急車を呼んだという。
病院で、残った葉を見た保健所の人が言った。
「これは、イヌサフランですね」
春に、ギョウジャニンニクとよく似た葉を出す植物だという。秋に薄紫の花が咲く、庭に植えられる花だ。葉にも球根にも強い毒がある。ちぎっても、においはしない。
秋になると斜面の端に薄紫の花が咲くのを、私は何年も見ていた。父がどこかから持ってきた園芸の花だろうと思っていた。それが、ギョウジャニンニクの中にまで広がっていた。
奥さんは助かった。ご主人は、助からなかった。
葬儀に行くかどうか、一晩迷って、行った。奥さんは私に頭を下げた。あなたのせいじゃない、とは言わなかった。言われても、私は困ったと思う。
その週のうちに、斜面を全部掘り返した。ギョウジャニンニクもイヌサフランも、区別せずに全部。軽トラの荷台に3杯あった。
今年の春、何も生えていない斜面を見ていたら、別の近所の人に「今年は配らないの?」と聞かれた。もうやめたんです、とだけ答えた。
においを嗅いだ、あの一回。あそこで手を止めていれば、と今も思う。止まっていたのは、ほんの2秒だった。
この失敗からの教訓
毎年同じ、という安心が、今年だけ違うことを見えなくしていた。
閲覧数12
反応 0 件
0
コメント 0
まだコメントはありません。最初のひとことをどうぞ。