しくったー編集部
@henshubu
結婚式のスピーチで新郎の「前の方との下見」の話をして、12年の友情が終わった
🤝 人間関係
被害レベル 4
かなりヤバい
去年の11月、大学からの友人の結婚式で、友人代表のスピーチをした。新郎側。12年の付き合いで、頼まれたときは素直にうれしかった。
原稿は3週間かけて書いた。笑いを取るだけの話にならないよう、最後はちゃんと褒めて終わるように組み立てた。風呂場で何度も読み上げる練習もした。そういうところは、昔から真面目にやるほうだ。
問題の一行は、最初から入れていた。
彼は式場を決めるのに7軒回ったらしい。そのうちの1軒が、5年前に前の彼女と下見に行った場所だった——という話。本人が飲み会で、自分から笑いながら話していたことだ。「同じ担当者が出てきて死ぬかと思った」と。そのとき私も笑ったし、その場には彼の同期が4人いた。
原稿を読み返しながら、一度だけ引っかかった。奥さんは、この話を知っているんだろうか。
知らないかもしれない。
でも、そのときこう思ったのを覚えている。
「本人が自分でネタにしてる話だぞ。俺が言って怒られるわけがない」
そう決めて、消さなかった。
当日、そこそこ受けていた。学生時代のだらしなさの話で笑いが起きて、勢いがついていた。だからそのまま行った。
「式場を7軒も回ったそうですが、そのうち1軒は、5年前にも一度、別の方と下見に行った場所だったそうです」
笑い声が、途中で止まった。
3列目のテーブルで、誰かがグラスを置く音がした。高砂を見たら、彼は下を向いていた。新婦は笑っていた。笑ったまま、まっすぐ前を見ていた。
私は予定どおり彼を褒めて、乾杯の人にマイクを渡した。席に戻る途中で、手が震えているのが分かった。
二次会に、新婦は来なかった。彼は来た。私とは、一度も目を合わせなかった。
3日後、彼からLINEが来た。長い文章ではなかった。
「悪気がないのは分かってる。ただ、あれは俺が言っていい話で、お前が言っていい話じゃなかった。あの日のことを、あいつは一生覚えると思う。俺も覚えると思う」
返した謝罪には既読がついた。返事はなかった。
年が明けてから、共通の友人の飲み会に呼ばれなくなった。5月に幹事の友人に理由を聞いたら、「あー、あれな」と言われて、それ以上は何も言われなかった。
12年のうちの、45秒だった。
手元の原稿には、今もその一行が残っている。消してから式に行けばよかったと思う。でも本当に必要だったのは、引っかかったあの夜に、彼へ一本電話することだった。「これ言っていい?」で済んだ話だ。
かけなかった理由も、自分では分かっている。ダメだと言われるのが、分かっていたからだ。
原稿は3週間かけて書いた。笑いを取るだけの話にならないよう、最後はちゃんと褒めて終わるように組み立てた。風呂場で何度も読み上げる練習もした。そういうところは、昔から真面目にやるほうだ。
問題の一行は、最初から入れていた。
彼は式場を決めるのに7軒回ったらしい。そのうちの1軒が、5年前に前の彼女と下見に行った場所だった——という話。本人が飲み会で、自分から笑いながら話していたことだ。「同じ担当者が出てきて死ぬかと思った」と。そのとき私も笑ったし、その場には彼の同期が4人いた。
原稿を読み返しながら、一度だけ引っかかった。奥さんは、この話を知っているんだろうか。
知らないかもしれない。
でも、そのときこう思ったのを覚えている。
「本人が自分でネタにしてる話だぞ。俺が言って怒られるわけがない」
そう決めて、消さなかった。
当日、そこそこ受けていた。学生時代のだらしなさの話で笑いが起きて、勢いがついていた。だからそのまま行った。
「式場を7軒も回ったそうですが、そのうち1軒は、5年前にも一度、別の方と下見に行った場所だったそうです」
笑い声が、途中で止まった。
3列目のテーブルで、誰かがグラスを置く音がした。高砂を見たら、彼は下を向いていた。新婦は笑っていた。笑ったまま、まっすぐ前を見ていた。
私は予定どおり彼を褒めて、乾杯の人にマイクを渡した。席に戻る途中で、手が震えているのが分かった。
二次会に、新婦は来なかった。彼は来た。私とは、一度も目を合わせなかった。
3日後、彼からLINEが来た。長い文章ではなかった。
「悪気がないのは分かってる。ただ、あれは俺が言っていい話で、お前が言っていい話じゃなかった。あの日のことを、あいつは一生覚えると思う。俺も覚えると思う」
返した謝罪には既読がついた。返事はなかった。
年が明けてから、共通の友人の飲み会に呼ばれなくなった。5月に幹事の友人に理由を聞いたら、「あー、あれな」と言われて、それ以上は何も言われなかった。
12年のうちの、45秒だった。
手元の原稿には、今もその一行が残っている。消してから式に行けばよかったと思う。でも本当に必要だったのは、引っかかったあの夜に、彼へ一本電話することだった。「これ言っていい?」で済んだ話だ。
かけなかった理由も、自分では分かっている。ダメだと言われるのが、分かっていたからだ。
この失敗からの教訓
本人がネタにしている話でも、それを言っていいのは本人だけだった
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