しくったー編集部
@henshubu
花見の場所取りの飲み会で、動かなくなった幹事を桜の木の下に寝かせた
🤝 人間関係
被害レベル 5
人生レベル
あの夜、彼の濡れたズボンを脱がせたのは私だった。
大学2年の春、サークルで、川べりの花見の場所取りを兼ねた飲み会をした。幹事は同じ2年の彼だった。紙コップに25度の焼酎を注いでは、コールに合わせて空けていた。1時間で、ペットボトル1本近く。途中からろれつが回らなくなり、そのあと急に静かになった。
呼んでも返事をしなかった。失禁していた。
「救急車、呼んだほうがいいかな」と、私は隣の先輩に言った。自分の声がずいぶん小さかったのを覚えている。先輩は、去年も一人こうなったけど朝には起きた、と言った。救急車を呼んだら大学に知られて、サークルが活動停止になるかもしれない、とも言った。
彼はいびきをかいていた。息はしている。寝かせておけば抜ける。私もそう思うことにした。
濡れたズボンを脱がせてレジャーシートでくるみ、宴会の輪から少し離れた桜の木の下に寝かせた。
それから3時間あまり、私たちは飲み続けた。ときどき誰かが「生きてる?」と見に行っては、「寝てる」と戻ってきた。私も一度見に行った。暗くて顔はよく見えなかった。いびきが聞こえない気がしたけれど、風の音のせいだと思った。
夜中の1時過ぎ、片付けを始めた女子が、彼の手が冷たいと言った。そこで救急車を呼んだ。救急車が着く前に、もうみんな分かっていた。急性アルコール中毒だった。
半年後、彼の両親から手紙が来た。1年生を除く参加者全員にあてて、責任を認めて解決金を払ってほしい、と書いてあった。私は親に頭を下げて200万円を借り、払った。払わなかった人たちは、法的な責任はないと言った。両親はその人たちを相手に裁判を起こした。
サークルの仲間とは、それきり会っていない。会えば、誰が最初に「寝かせておけば」と言ったのかの話になる。それはもう分かっている。先輩が言って、私がうなずいた。
今でも飲み会で誰かが急に静かになると、私は立ち上がって顔をのぞき込む。何度も声をかけて、場が白けても、119番にかける。
あの夜、私は一度だけ「救急車」と言った。もう一度言えばよかった。それだけのことが、どうしてもできなかった。
大学2年の春、サークルで、川べりの花見の場所取りを兼ねた飲み会をした。幹事は同じ2年の彼だった。紙コップに25度の焼酎を注いでは、コールに合わせて空けていた。1時間で、ペットボトル1本近く。途中からろれつが回らなくなり、そのあと急に静かになった。
呼んでも返事をしなかった。失禁していた。
「救急車、呼んだほうがいいかな」と、私は隣の先輩に言った。自分の声がずいぶん小さかったのを覚えている。先輩は、去年も一人こうなったけど朝には起きた、と言った。救急車を呼んだら大学に知られて、サークルが活動停止になるかもしれない、とも言った。
彼はいびきをかいていた。息はしている。寝かせておけば抜ける。私もそう思うことにした。
濡れたズボンを脱がせてレジャーシートでくるみ、宴会の輪から少し離れた桜の木の下に寝かせた。
それから3時間あまり、私たちは飲み続けた。ときどき誰かが「生きてる?」と見に行っては、「寝てる」と戻ってきた。私も一度見に行った。暗くて顔はよく見えなかった。いびきが聞こえない気がしたけれど、風の音のせいだと思った。
夜中の1時過ぎ、片付けを始めた女子が、彼の手が冷たいと言った。そこで救急車を呼んだ。救急車が着く前に、もうみんな分かっていた。急性アルコール中毒だった。
半年後、彼の両親から手紙が来た。1年生を除く参加者全員にあてて、責任を認めて解決金を払ってほしい、と書いてあった。私は親に頭を下げて200万円を借り、払った。払わなかった人たちは、法的な責任はないと言った。両親はその人たちを相手に裁判を起こした。
サークルの仲間とは、それきり会っていない。会えば、誰が最初に「寝かせておけば」と言ったのかの話になる。それはもう分かっている。先輩が言って、私がうなずいた。
今でも飲み会で誰かが急に静かになると、私は立ち上がって顔をのぞき込む。何度も声をかけて、場が白けても、119番にかける。
あの夜、私は一度だけ「救急車」と言った。もう一度言えばよかった。それだけのことが、どうしてもできなかった。
この失敗からの教訓
「大げさだと思われたくない」は、人の命より軽い。それをあの夜に知った。
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