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しくったー

失敗談

老眼の社長のために原稿の字を大きくしたら、「(ここで笑いを待つ)」まで読み上げられた

💼 仕事・職場 被害レベル 2 ちょい痛い
総務に来て6年。社長の挨拶原稿は、毎回私が書いている。
本文は黒。その間に、小さな灰色の字でカッコ書きの指示を入れる。(ここで一礼)(ここで会場を見渡す)。社長はそこを読まずに、そのとおりに動く。6年、それで回ってきた。
創立60周年の式典。来賓と取引先で320人。地元のテレビも1台入る。
前の週、社長に「最近、字が見えなくてね」と言われ、本文を全部大きくした。刷り上がりを見ると、灰色だったカッコ書きも、同じ大きさの黒い字になっていた。
直せば、ページの割り付けが全部ずれる。社長は6年、カッコを読み飛ばしてきた人だ。字が大きくなっても同じだろう。そのまま渡した。
当日。社長は壇上で原稿を開いた。
「本日はお忙しいところ……ここで会場を見渡す」
社長は、ゆっくり会場を見渡した。320人が静まり返った。
「創業者は、会社の金庫に羊羹をしまっていた人でして……ここで笑いを待つ」
会場がどっと沸いた。羊羹の話は、誰も聞いていなかった。社長は耳まで赤くして、残りを自分の言葉で話した。夕方のニュースは、そこだけを流した。
式のあと、社長は黙って原稿を私に返した。
その夜、私は6年分の原稿のデータから、カッコ書きを全部消した。
この失敗からの教訓

いつも通りが通じるのは、見た目がいつも通りのときだけ。

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