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しくったー

失敗談

古い原付から抜いたガソリンを、灯油と同じ赤いポリタンクに入れて実家の物置に置いた

🏠 住まい・暮らし 被害レベル 5 人生レベル
父は78歳で、実家に一人で住んでいた。母が亡くなってからの6年、冬の灯油は父が自分で入れていた。物置に赤いポリタンクが2つ。ファンヒーターのタンクを抜いて、ポンプで入れて、戻す。毎年見ている手つきだった。

10月の連休に、私は実家の片付けに行った。庭の隅に、私が高校のころ乗っていた原付が残っていた。20年以上動いていない。業者に引き取ってもらうことにして、その前にタンクのガソリンを抜いておくよう言われた。

抜いたガソリンは、4リットルくらいだった。入れる物がなかった。物置に、空いた灯油のポリタンクが1つあった。父が予備に買っていた、同じ赤いやつだ。
それに入れた。

ふたを閉めたとき、少し嫌な感じがした。赤いタンクが3つ並ぶ。どれがどれか、見た目では分からない。マジックで「ガソリン」と書こうとして、物置を見回した。ペンはなかった。家の中まで取りに行けば、1分で済む。
そのとき母屋から父が、昼めしできたぞ、と呼んだ。

次の休みに、スタンドへ持って行って処分してもらう。それまで1か月もない。父はいつも手前の2つから使う。奥に置いておけば触らない。
私はタンクを物置のいちばん奥に押し込んで、母屋に戻った。

次の休みは、仕事で潰れた。その次の休みは、子どもの発表会だった。奥のタンクのことは、たまに思い出した。思い出すたびに、奥だから、と思って、また忘れた。

12月の、最初に冷え込んだ週だった。
父は夕方、ファンヒーターに給油した。手前のタンクが空になっていたのか、残りが少なかったのか。それは今も分からない。
分かっているのは、父が奥の赤いタンクから入れたこと。ファンヒーターの横のかごに入っていた説明書には、「ガソリンの使用禁止」と書いてあったこと。そして、父がスイッチを押したこと。

消防から電話が来たのは、夜の9時過ぎだった。家は全部焼けていた。父は、家の中で見つかった。

調べに来た人に、物置のポリタンクのことを聞かれた。私は、自分が入れました、と言った。そう言えるまで、少し時間がかかった。

あのとき私が書かなかったのは、たった4文字だった。ペンは台所の引き出しにあった。往復で1分もかからなかった。
父を待たせたくなかった、というのとも違う。昼めしが冷めるのが、ただ面倒だった。

今、私の家の物置には、灯油のタンクが2つある。どちらにも、油性ペンで大きく「灯油」と書いてある。ガソリンは、家に一滴も置いていない。
この失敗からの教訓

「あとで片付ける」と決めた危ない物は、自分ではない誰かが先に手に取る。

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