しくったー編集部
@henshubu
既婚なのに婚活パーティーの数合わせに行き、8か月「独身」のまま付き合った
💔 恋愛・結婚
被害レベル 5
人生レベル
結婚して6年目の春、独身の後輩に頼まれた。
「婚活パーティー、男が1人足りないんです。座ってるだけでいいんで」
指輪を外して、ポケットに入れた。妻には「後輩と飲む」と言った。嘘は、それ一つのつもりだった。
隣の席になったのが、彩さんだった。看護師で、32歳。最後に気になる人の番号を書く紙に、彼女は私の番号を書いていた。私は誰の番号も書かなかった。それなのに、帰りのエレベーターで連絡先を聞かれて、断れなかった。
「一回だけ食事して、ちゃんと言おう」
そう思って、2回目に会った。言えなかった。3回目も言えなかった。結婚していると打ち明ける場面は、毎回、会う前の電車の中にだけあった。
嘘は、ひとつ足すたびに次が要った。土日は「仕事」。家に呼ばないのは「散らかってるから」。指輪の跡は「腕時計の日焼け」。スマホは2台にした。彩さんの夜勤明けに合わせて有給を取り、妻にはその日も会社にいると言った。
一度だけ、彩さんが言った。
「なんで家に呼んでくれないの? 奥さんがいるとか?」
笑って言われた。私も笑った。
「いたら、こんなに会えないでしょ」
その晩、帰りの駅のトイレで、指輪をはめ直す手が震えた。それでも、次の約束はもう入っていた。
8か月目、彩さんが言った。
「来月、うちの親に会ってほしい」
その週末で終わりにするつもりだった。ちゃんと会って、ちゃんと謝って。そう決めた夜、家に帰ると、妻が食卓に座っていた。前にあったのは、2台目のスマホだった。車のドアポケットに、置き忘れていた。
妻は泣かなかった。画面を一枚ずつ、黙ってめくった。彩さんからの最後のメッセージは「お父さん、日曜の11時なら大丈夫だって」だった。
「この人は、あなたが結婚してるって知ってるの」
首を横に振った。妻はしばらく黙ってから、言った。
「じゃあ、この人にも、ちゃんと言って」
彩さんには、電話で全部話した。彼女は最後まで聞いて、「分かりました」とだけ言った。怒鳴られると思っていた。電話を切る直前、向こうで彼女が誰かに「ごめん、日曜なくなった」と小さく言うのが聞こえた。お父さんだったのだと思う。
妻とは、その年の冬に別れた。
指輪は、あの夜に入れたジャケットのポケットに、今も入ったままだ。ジャケットは、あれから一度も着ていない。
「婚活パーティー、男が1人足りないんです。座ってるだけでいいんで」
指輪を外して、ポケットに入れた。妻には「後輩と飲む」と言った。嘘は、それ一つのつもりだった。
隣の席になったのが、彩さんだった。看護師で、32歳。最後に気になる人の番号を書く紙に、彼女は私の番号を書いていた。私は誰の番号も書かなかった。それなのに、帰りのエレベーターで連絡先を聞かれて、断れなかった。
「一回だけ食事して、ちゃんと言おう」
そう思って、2回目に会った。言えなかった。3回目も言えなかった。結婚していると打ち明ける場面は、毎回、会う前の電車の中にだけあった。
嘘は、ひとつ足すたびに次が要った。土日は「仕事」。家に呼ばないのは「散らかってるから」。指輪の跡は「腕時計の日焼け」。スマホは2台にした。彩さんの夜勤明けに合わせて有給を取り、妻にはその日も会社にいると言った。
一度だけ、彩さんが言った。
「なんで家に呼んでくれないの? 奥さんがいるとか?」
笑って言われた。私も笑った。
「いたら、こんなに会えないでしょ」
その晩、帰りの駅のトイレで、指輪をはめ直す手が震えた。それでも、次の約束はもう入っていた。
8か月目、彩さんが言った。
「来月、うちの親に会ってほしい」
その週末で終わりにするつもりだった。ちゃんと会って、ちゃんと謝って。そう決めた夜、家に帰ると、妻が食卓に座っていた。前にあったのは、2台目のスマホだった。車のドアポケットに、置き忘れていた。
妻は泣かなかった。画面を一枚ずつ、黙ってめくった。彩さんからの最後のメッセージは「お父さん、日曜の11時なら大丈夫だって」だった。
「この人は、あなたが結婚してるって知ってるの」
首を横に振った。妻はしばらく黙ってから、言った。
「じゃあ、この人にも、ちゃんと言って」
彩さんには、電話で全部話した。彼女は最後まで聞いて、「分かりました」とだけ言った。怒鳴られると思っていた。電話を切る直前、向こうで彼女が誰かに「ごめん、日曜なくなった」と小さく言うのが聞こえた。お父さんだったのだと思う。
妻とは、その年の冬に別れた。
指輪は、あの夜に入れたジャケットのポケットに、今も入ったままだ。ジャケットは、あれから一度も着ていない。
この失敗からの教訓
嘘は最初の一つより、言えなかった二回目のほうが重かった。
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