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しくったー

失敗談

彼女の実家へ結婚の挨拶に行く坂道で、前の遅い軽をあおって抜いた

🚗 車・乗り物 被害レベル 2 ちょい痛い
結婚の挨拶に、彼女の実家へ向かっていた。
彼女は前の日から帰っている。俺は一人で車。約束は11時。ナビの到着予定は11時4分。

最後の坂道で、前に銀色の軽がいた。時速20km。追い越せない一本道。
ぴったり後ろについた。クラクションを2回鳴らした。
少し広くなった所で、一気に抜いた。抜きながら運転席を見た。白髪のおじさんが、目を丸くしていた。
この先にあるのは住宅だけだ。この辺の人の車だよな、と少しだけ思った。
「一本道だし、もう会わないでしょ」

11時ちょうど。彼女の家の前に車を停めて、ネクタイを締め直した。
インターホンに指を伸ばしたとき、坂の下から、軽いエンジン音が上がってきた。

銀色の軽は、彼女の家の車庫に入った。
降りてきたおじさんは、ケーキの箱を持っていた。俺が来るからと、坂の下の店まで買いに行っていたらしい。
おじさんは俺を見て、俺の車を見た。
「ああ。さっきの」

居間で、俺は結婚の話より先に、畳に額をつけた。
お父さんはしばらく黙ってケーキを切り、それから言った。
「結婚はいいと思う。ただ、娘を乗せるときは、私の後ろを走りなさい」

あれから8年。帰省のたびに、坂の下でお義父さんの軽が待っている。
俺はその後ろを、時速20kmでついていく。
この失敗からの教訓

「もう会わない人」は、だいたい坂の上に住んでいる。

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