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しくったー

失敗談

父からの2分14秒の留守電を「墓の話でしょ」と聞かなかった。父は一人で告知を受けていた

👨‍👩‍👧 家族・子育て 被害レベル 5 人生レベル
父は、電話で長く話す人ではなかった。留守電はいつも「電話くれ」の一言で、15秒もない。

去年の2月、仕事中に父から着信があった。出られなかった。夜にスマホを見ると、留守電が1件。2分14秒。
長い、と思った。父にしては、ありえない長さだった。

その頃、父とは墓じまいのことで揉めていた。田舎の墓を片付けたい私と、「俺が入るまでは動かすな」の父。前の週も電話で言い合いになって、父は途中で切った。
だから、再生ボタンに指を置いて、やめた。
「どうせ墓の話でしょ。2分も説教される元気はない」
折り返しもしなかった。週末にかけ直そうと思い、週末には忘れていた。
3週間後、父から「元気か」とだけLINEが来た。私は「元気。そっちは?」と返した。「まあまあ」と返ってきて、それで終わった。

父が膵臓のがんだと知ったのは、その年の夏だった。庭で倒れて救急車で運ばれたと、近所の人が電話をくれた。病院で主治医に言われた。
「娘さんですか。春にお伝えしたとき、お一人でいらしたので」
父は、治療をほとんど断っていた。「一人で通うのは無理だから」と話していたそうだ。

10月に亡くなるまで、私は週末ごとに病院へ通った。父は留守電のことを一度も口にしなかった。私も、墓の話はしなかった。

葬儀が終わって、実家を片付けていた夜、ふと思い出して、あの留守電を再生した。
「あー、父さんだ。忙しいとこ悪いな」から始まっていた。
病院で検査を受けたこと。結果を聞きに行くのが3月10日であること。先生の話は難しいから、一人だと頭に入らない気がすること。「来られんかったら、それでいい。仕事、大事だからな」。そのあと20秒くらい、言葉を探すような間があって、「墓のことは、お前の好きにしていい」で切れていた。

3月10日、私は会社の送別会に出ていた。

墓は、まだ片付けていない。父の言うとおりにしたいのか、自分で決めるのが怖いのか、自分でもよく分からない。
スマホは2回買い替えた。あの留守電だけは音声ファイルにして、パソコンに移してある。再生したのは、あの夜の1回きりだ。
この失敗からの教訓

いつもと長さが違う連絡は、中身の見当がついていても、その日のうちに聞くことにしている。

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